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  • 執筆者の写真 ADEX plus

インドネシア トラジャ地方 訪問レポート 後編



~SDGsの基本にある~幸せって何だろう


SDGs推進室 馬場滋

 

幸せその2 コーヒー採取・栽培のお母さん


彼女はキーコーヒーの農園でコーヒー豆の採取の仕事をしながら、自分の敷地でもコーヒーを育てています。



彼女はご主人と4人の子ども達の6人暮らし。トラジャ族の人たちは、宗教上の関係で、トラジャ族同士で結婚するケースが多く、子どもは4人~6人産むそうなので、僻地ともいえる場所でありながら、人口が減る事はほぼないそうです。







ご主人の仕事は聞けませんでしたが、大学生と高校生の娘さん。中学生の長男。次男は、生まれつきのろうあ者で、学校には行っていないそうです。しかし、その次男君も人懐っこい性格で、撮影している我々の後をずっと追っかけていました。


コーヒーの木/放し飼いの鶏/ご家族

インドネシアもここ数年で急激にケータイが普及しました。ここの女子二人も嬉しそうに携帯を持ち歩いていました。


おそろしい程の人数が、荷台に乗ったバスもインドネシアの名物です。



-このご家族にもお聞きしました。



「皆様、幸せですか?」



-そうすると、皆で顔を合わせて、大きな声で言ってくれたのです。



「幸せです。」



-そしてお母さんはこう答えてくれました。



家族といるだけで、家族がいてくれるだけで幸せだと思います。この子達二人も、間もなく嫁に行くでしょう。結婚式の事を考えるだけでも、ワクワクします。


(※トラジャ地方の方達にとっては結婚式とお葬式は人生の一大行事なのです。)


 

幸せその3 アワード受賞の22歳


彼女はコーヒーを栽培するために、2年前ここに引っ越してきました。トラジャの中でも、かなりの奥地。ホテルから、1時間半以上ジープに揺られてやっと着きました。10歳上のご主人と二人の子どもの4人家族です。



私たちから見たら、何でこんな奥地にと思うのですが、本人は引っ越せただけで大満足で、一生ここに住むつもりでいるそうです。








かなり大きな家ではありますが、家財道具も電化製品もほぼありませんでした。電気は通っているようですが、電球1個を付けるのがやっと。お湯を沸かすのも、調理をするのも、全て薪を焚いています。



汚い話になりますが、トイレは屋外に建ててあります。夜は正に真っ暗闇の中をトイレに行かざるを得ません。トイレの小屋には、鍋やタライも置いてあり、衛生に対する概念も違う事を実感しました。



トイレと言っても、小を足すだけ。柄杓で水を救って流すだけです。インタビューした3つの家、皆同じでした。大は犬や家畜に食べさせるか、昔の日本のように肥料にするそうです。



庭には、タバコの原料となる木も植えてありました。インドネシアの男性は、ほぼ喫煙者です。



タバコの木/住まいの様子



揺られた道

インタビュー中にスコールが降り出し、このお宅の入り口となる道路が完全な泥濘になってしまいました。私たちが乗っていたジープは前に進めず、崖に後輪がかかる始末。後部の二人はあわてて逃げ出し、私自身も命の危険を感じてしまいました。












彼女は毎年、キーコーヒーが優秀なコーヒー豆を納入した業者を表彰するアワードを、見事受賞しています。


-受賞した事を誇りに思っている彼女に聞きました。


「幸せですか?」



「もちろんです。頑張って来た甲斐がありました。」



「今は子供二人しかいませんが、私はまだ22歳です。これからさらに10人作りたいと思っています。12人の子ども達に囲まれる生活って良いと思いませんか。」



本当に嬉しそうにそう話すのです。聞いている私たちは思わず拍手を送ってしまいました。


 

幸せって何だろう


お葬式の風景

トラジャの人たちは、すぐにお葬式を行いません。「ランブ・ソロ」と呼ばれるお葬式には莫大な費用がかかります。その費用が貯まると想定される、何年後のいつにお葬式を行おうと、親戚一同で決めます。


亡くなって、お葬式を行う日までは、病院でミイラ状態にしてもらい、自宅か自宅周辺に祀っておくと聞きました。お葬式は三日三晩、長ければ一週間以上行われます。その際、水牛は故人を天国へ連れていく重要な生き物として扱われます。


訪れた人々の目の前で、水牛は故人のために生け贄として命を捧げられるのです。お葬式には、親戚一同だけでなく、近所の方も全て集まり、魂を送ります。



幸せの感じ方は環境と場所で全く異なります。



インタビューした3人の女性は、本当に幸せそうでした。心から幸せだと思っているのでしょう。家族がいるだけで、家族と一緒に暮らせるだけで、家族と一緒に食事をするだけで、幸せなのです。



自分たちの事を貧乏だと思っていません。暮らしていけるだけで十分なのです。



テレビも見ない、新聞もない、インターネットもないので、情報量が少ない事も要因だと思います。戦後から、昭和30年代位までの日本もそうだったのではないでしょうか。



彼らに、お金を渡すことがSDGsではありません。彼らと話し、彼らの想いを聴いて、彼らの望みに少しでも寄り添っていく事がSDGsだと思います。SDGsの原点である「誰一人、取り残さない」を本当に実感しました。



手にするお金が少ない、欲しいものが手に入らない。それで不幸だと思っている日本人が恥ずかしくなりました。


人生観を変えてくれた、インドネシアに感謝します。



「インドネシア トラジャ地方訪問レポート」前編はこちらから。


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