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ADEXクリエーターズファイル Vol.2 クリエーティブディレクション局 角川 知紀〈中編〉



前編では、東亞合成アロンアルフア「君に、くっつけ!」がACCフィルム部門Bカテゴリーでファイナリストを受賞するところまでを紹介しました。今回、中編ではその背景や他作品について話を聞いていきます。〈インタビュアー ADEX総研 天野 泰司〉


ADEXクリエーターズファイルVol.2 角川 知紀 〈前編〉はこちらから


天野:前回の菅野さんへのインタビューでお話しを伺ったように、クライアントと膝をつき合わせてクライアントとともに同じ目線で考えていたからこそ、「君に、くっつけ!」を提案できたように感じます。


角川:そうですね。クライアントとはたくさんの議論をしました。なにか疑問や修正、変更があった場合でも話を持ち帰らないで、その場でとことん決まるまで話し合っていました。


天野:ところで「君に、くっつけ!」ではいろんなところに商品に関連するキーワードが埋め込まれていますね。たとえば、主人公「今直筑乃(いますぐつくの)」とか「九津剛(くっつつよし)」「早杉瞬華(はやすぎしゅんか)」などのネーミングは誰が考えたのですか?


角川:まず九津くん(くっつくん)や、今直筑乃(いますぐつくの)という名前を私の方で考えて、そのあとチームのみんなでいろんな名前を考えました。私はCMプランナー出身なので、例えば15秒の中でも、いかに無駄なく商品をアピールするのかを大切にしたいと考えています。例えば15秒CMで登場人物の名前を呼ぶときに、商品と関係ない名前を使うとちょっと時間がもったいないと感じたりします。そこで、名前を商品に近いものにして、連呼するというストーリーにすれば、エンターテインメントしながら商品や商品の特長・機能を訴求できると考え、九津くん(=ほぼ「くっつく」に聞こえる)という名前を作りました。


あとムービーでは、拡散させるための工夫をかなりしましたね。企画にあたっていくつかの達成すべきポイントを自らに与えて、そのすべてをムービーに盛り込みました。そのひとつが、0秒目からサプライズをつくってスキップさせないこと。そこで映画会社のオープニングのようにアロンアルフアをふんだんにフィーチャーしたビジュアルを入れています。


他にも3秒に1回くらいの突っ込みどころを入れるというポイントも決めて、それを2分間最後までやり続けることにしました。それを達成するために、映画の予告編のような展開としています。ストーリーに起承転結をつくってしまうと、盛り上がりがなくなるところがでてきたり、視聴者の方に展開を先読みされて途中であっけなくスキップされてしまいます。そこで映画の予告編のようにおいしいシーンを詰め合わせにすれば、3秒に1回くらいの突っ込みどころをつくれる構成になるだろうという狙いです。映画の予告編の構成にすることは、最初に決めて企画に入りました。


天野:僕も最初にムービーを見たときはかなり驚きました。それも計算していた訳ですね。

また、全体の世界観だけでなく、細かな部分まで設計されたこだわった作品ですね。


角川:いろんなネタはチーム全員でアイデアを出し合いました。それをほぼ全て取り込めるような筋を考え、ストーリーにまとめていった感じです。


天野:なるほど、そんな背景があったのですね。「君に、くっつけ!」がたくさんの広告賞を受賞したのがよくわかります。


ところで、さらに個人的に気に入っている角川さんの作品で、パーパス「お得側家」のCMがありますが、このCMを企画したのは「君に、くっつけ!」の前でしたか?後ろでしたか?


パーパスTVCM「お得側家シリーズ」作品はこちらでご覧いただけます。


角川:あれは、「君にくっつけ!」の前でしたね。


天野:あのTVCMも「お得」と徳川家をかけて、登場人物の設定や時代劇のセットにクライアントの製品を組み込んで商品のメリットを強調する演出になっていて、角川さんらしい企画のように思うのですが…。


角川:ありがとうございます。中村ECDと一緒に企画をしたのですが、“ガス給湯器と時代劇”という、いい意味での違和感、ギャップがつくれたTVCMだと思います。


天野:パーパスのガス給湯器のTVCMで“お得”と徳川家をかけて、「お得側家」とした人物と時代劇風の設定、そこにパーパスのガス給湯器のメリットを強調する演出はやはり角川さんらしい企画だと思いますね。


ところで、角川さんは東京理科大出身で、大学院では暗号を研究していたと聞いているのですが、こうした発想は理系的な部分からの発想からなのでしょうか?そもそもCMクリエーターを志望することも大学では珍しかったのではないのですか?


角川:うーん。そのあたり説明は難しいのですが、元々、映像はずっと好きでして、大学の時も自分で映画などを撮っていました。大学院時代は研究も楽しくやっていましたが、学校に泊まることもあったりと、なかなか辛いときもありました。


将来の進路を考えるなかで、本能的に好きなことでないと辛いことも乗り越えられないなと感じ、映像の道に進みたいと気づいたことが大きかったですね。でも研究でやっていた仮説を立てて、検証するというプロセスはいまも役立っていると思います。


天野:なるほど。もともと、映像が好きだったという背景があったわけですね。ちなみに、その映像好きになったのは何の影響ですか?


角川:僕は2,3歳の頃から母親に抱っこされて映画館に通っていた記憶があり、とにかく小さいときから映画大好き少年でした。特に祖父が映画好きで、家の大きな棚には全面にずらっと映画のビデオテープが並んでいました。祖父の家に行っては、そこに並んだ映画をかたっぱしから見ていました。


天野:そのビデオテープはどんな映画だったんですか?


角川:スタローンとかシュワルツネッガー、ジャッキー・チェン、ブルース・ウィルスなど洋画が多くて、その影響で洋画が大好きになりました。逆に日本映画はあんまり好きになれなかったのですが、「PARTY7」というCMディレクターの石井克人さんが監督した映画をみまして、当時の私には斬新でかなり影響を受けました。そのときはじめてCMに興味を持ったことを覚えています。


天野:なるほど、そうした背景があったわけですね。でも、ADEXに入社したときは営業部門でしたよね。制作部署への異動は角川さんの希望だったのですか?


角川:そうです。


天野:やはり映像に関わりたかったということですね。そうしてCD局で制作に関わりながら、角川さんも広告賞によくエントリーしていますが、なにか理由がありますか?


角川:そうですね。前回の菅野さんもおっしゃっていましたが、僕もクリエーターとしてチャレンジしたいという気持ちで広告賞にエントリーしています。

もちろん広告賞がすべてではないのですが、自分が企画をするときに、これが新しいのか?他のクリエーターが作ったものと並べても争えるレベルにあるのか?という指標が得られることが大きいです。自分の中にこうした指標があることでアイデアや企画に良い影響もうまれ、実際の仕事にもずいぶん役立っています。


天野:なるほど、確かに第三者的な視点で確認することは大切ですね。


角川:もちろん商品が売れたりすることが一番ですが、ちゃんと社会に対してもいい影響が与えられるのか?という視点を持つことも大切だと思っています。


天野:広告賞を受賞して変わったことがありますか?


角川:それをきっかけに仕事を依頼していただくこともあるので、良い環境づくりにも影響しています。


天野:また振り返りになるのですが、いままでの作品を通して角川さんぽいクリエーティブがあるように感じるのですが、角川さんのクリエーティブへのこだわりとかポイントはあるのでしょうか?


角川:自分のスタイル的なことですか…?


そうですね。僕は、笑ったり、クスッとしたり、驚いたりすることが大好きです。クリエーティブショートコントと名付けているのですが「商品の良いところ」と「世の中の面白いところ」が交わる部分で企画することをやっています。クスッとするだけで、商品に対してポジティブなイメージをもったり、見え方が一変することがあると思うのですが、そんなことをやりたいと思っています。


あと、PRにどう露出するのか、ニュースにどう取り上げてもらうかを意識していて、そうしたポイントを企画に盛り込んでいます。しっかりとした形で世の中に出るようにPRリリースも自分で書くようにしています。


ADEXクリエーターズファイルVol.2 角川 知紀〈前編〉はこちらから


後編に続きます。


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