広告アイデアの発想法 関東学園大学 特別講義レポート(後編)

広告アイデアの考え方と伝え方

関東学園大学の「広告論」第2回目で実際の授業に登壇し、学生に向けて広告会社の仕事内容について講義を行いました。担当したのはCPD2局でクリエーティブディレクター/CMプランナーを務める角川知紀。前回の授業で出した宿題コピーの講評に始まり、後半では「価値をどう伝えるか」をテーマに、国内外の広告事例を紹介しながらアイデアの作り方についてお話ししました。

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40本超のコピーが集まった宿題

「午後の講義でまだ眠いと思うので、できるだけ楽しい話をしようと思います。」

そんな言葉から始まった講義。最初に取り上げたのは、前回出した「お風呂キャンセル界隈の人がお風呂に入りたくなる言葉」という宿題でした。

前回は「価値の見つけ方」というテーマで、特徴と価値の違いや、受け手目線で考える大切さを伝えた角川。40本を超えるコピーを一つひとつ講評していきます。

分類された視点から見る視野の広げ方

「皆さんのコピーを分類してみようと思います。」

集まったコピーを恐怖訴求系、人間関係系、言葉遊び系、ハードルを下げる系、ベネフィット訴求系、ごほうび系、新奇性系など視点をいくつかのカテゴリーに分けて紹介していきました。

「臭いの原因、自分かも」といった不安を煽るものから、「一緒に入ろう」というシンプルな言葉、「寝る前10分で明日の気分が変わる」という未来の価値を表現する視点まで、学生たちの提出物には様々なコピーが並んでいます。

「一人で考えていると、視野はどんどん狭くなる。自分では思いつかなかった視点がたくさんあることを、皆さんにも感じてもらえればと思います」

他の人のアイデアに触れることも、発想の幅を広げる一つの方法です。

「言う」と「伝わる」は違う

コピーの講評に続いて、話題は「伝え方」へ移りました。

「価値があっても、それが伝わらなければ人は動かない。言うと伝わるは違うんです。」

角川が紹介したのは、海外のある直線道路の事例です。こうした道路では、「スピードを落とせ」と看板で呼びかけても、実際に速度を落とすドライバーは多くありません。 そこで、この道路では看板を設置するのではなく、「道路の中央にある白線そのものを消す」というアイデアを実施しました。すると、多くのドライバーがスピードを出すことに不安を感じて自然と速度を落とすようになり、結果として事故の減少につながったといいます。

「言葉で伝わらなかったことを、別の形に変えたことで行動が変わった。極端な例ですが、これがアイデアの力です」

情報や選択肢があふれる現代では、価値をそのまま説明するだけで人を動かすのは難しくなっています。相手に届く形へ変換する工夫が必要だと、角川は話しました。

広告事例から「アイデアの構造」を学ぶ

「いいものを構造で真似すると、アイデアを思いつきやすくなります。」

角川はこう述べ、世界三大広告賞の一つであるカンヌライオンズをはじめとした受賞事例を次々と紹介。

車のロック解除音を絶滅危惧種のカエルの鳴き声に変えた自動車メーカーの施策。
電車の切符をそのまま宝くじの抽選番号にしたインドの鉄道会社の事例。
免許証に臓器提供のサインがあれば軽い交通違反を一度だけ見逃すという米国の施策。

内容は異なりますが、いずれも行動を促すために強いインセンティブを用意している点で共通しています。

「事例を分析していくと、アイデアの構造が似ているものが見えてくる。その構造を言葉にしておけば、自分が何かを考えるときの引き出しになります」

大切なのは、表面的な表現をまねることではなく、なぜそのアイデアが機能したのかを捉えること。角川はそれを「いいものを構造で真似する」と話しました。

アイデアは組み合わせと制約から生まれる

講義の終盤では、アイデアが生まれるまでの過程が語られました。

例として、ある名作映画の舞台を宇宙に置き換えたことで、新たな金字塔となったホラー映画の逸話を紹介。新しいアイデアも、過去に生まれたもの同士の組み合わせからつくられると説明しました。

また、自由に考えようとするほど、かえって発想が止まることもあります。そんなときは、あえて条件を設けてみる。「普通ならやることを一つやめる」といった制約も、発想を広げるきっかけになると話しました。

学生からの感想

講義後には、学生から感想が寄せられました。

「アイデアを考えるのは好きなので、参考になりました。ただ、価値を見つけた後、それをCMのような形にするまでの道のりが難しいと感じています。」

この質問に対し、角川は「CMで伝えられることは一つなので、色々やろうとせず、一つにしぼって考えてみることが大事」と回答。伝えることを一つに絞ることで、かえって発想が広がることがあると伝えました。

学生からは「将来は広告とは違う分野で、新しい企画や開発に携わりたい。今日の話を生かしたい」という声もありました。

また、映画を見ながら無意識に構造を分析してしまうと話した学生には、「その視点はすごくいい」と角川。学生たちとのコミュニケーションの中で会場から笑いが起きる場面もありました。

今回の講義で扱ったのは、見つけた価値を相手に届く形へ変える方法です。広告に限らず、企画や開発など、新しいアイデアが求められる様々な仕事につながる内容となりました。ADEX日本経済広告社ではクライアントワークから学生向けのワークショップまで、様々な活動に取り組んでいます。新しい企画やアイデアを生み出す場面で活かせる「クリエーティブの視点」を、これからも社内外へ広く届けていきます。

・担当者名
ADEX日本経済広告社
CPD2局1部 CMプランナー/クリエーティブディレクター
角川 知紀


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